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「国策」で思考停止した東芝のツケは大きい

 世界の現実から目を逸らし、都合のいいことしか見ようとしない視野狭窄に陥ってしまったのが、第三の失敗だろう。この時代に、世界で原発事業が伸びていくわけがない、と考える社員も当然いただろう。が、残念なことに、その意見が上層部に届くことはなかった。イエスマンばかりが出世する組織の弱いところはここにある。

 大西さんの本によれば、東芝は「チャレンジ」という言葉を大事にしていたという。かつて東芝をピンチから救った土光敏夫氏は、がんばって高い目標に挑戦するという意味で「チャレンジ」という言葉を使ったが、今では「不正をしてでも、達成しなければならない数字」という意味にとらえられるようになったという。その結果が、2015年に発覚した粉飾決算である。

 ガバナンスもいちおう形はつくられていた。内部告発がしやすいようなシステムはあったが、悪い空気に水をさす人はいなかった。粉飾決算を内部告発する者は、ゼロだった。多くの社員が誤ったチャレンジをしていた。みんな忖度という病に感染していたのだ。

◆「サザエさん」と東芝

 結局、西室泰三氏が、その後の歴代の6人の社長をコントロールしながら、国策の原発にしがみついた。西室氏は東芝の会長を退いた後、日本郵政の社長も務めている。ここ7代の社長たちは、東芝をなんとかしようというよりも、自分が財界でいいポジションをとることに関心が高かったように見える。「全社一丸」とうたうリーダーが、全社ではなく、自分のことしか考えていなかった。

 経団連の会長を目指したり、安倍首相キモいりの経済財政諮問会議の民間議員を務めたりした。上層部の脳内サーチには、「国策」「経団連」「民間議員」のことばかりで、本当の意味で日本のためになる企業としての役割や、世界の動きは見えていなかったとしか思えない。

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