かつて「光る東芝」「みんな、みんな東芝」と歌っていた国民的企業が、パソコン事業も、白物家電も、医療機器部門も売却に追い込まれ、「生命線」ともいえる半導体部門も二転三転の末、売却先が決まろうとしている。なぜ、こんな事態に追い込まれてしまったのか。原発事業から手を引く機会は何度もあったはずなのに、なぜ、それができなかったのだろうか。
東芝が米国の原子炉メーカー、ウエスチングハウスを購入したのは2006年。すでに価値の低下している会社に、6600億円もの巨費を投じた。というのも、アメリカで9.11同時多発テロ以降、航空機が突っ込む事態も想定して、原発の安全基準が引き上げられている。そのため、原発建設のコストは跳ね上がり、アメリカ国内で新規の原発は難しくなった。
そこで、他国の企業に売却したいのだが、中国など旧東側諸国には売りたくない。そんなアメリカの意向を汲んで、日本政府が東芝に手を挙げさせた可能性がある。
東芝にしてみれば、「ババをつかまされた」と揶揄されようとも、国がお墨付きをくれたのだから、突き進むしかないと思ってしまったのが第一の失敗だ。
東芝という企業は、古くは東洋のエジソンと言われた、カラクリ人形の田中久重を源流とする。東電や日立とともに、電力のインフラを担ってきた。国の発展を支えているという自負が、いつしか国の言う通りにしていれば間違いないというマインドに変わっていったときに、東芝は崩壊しはじめたのだと思う。