「4年前にようやく、子供の頃から憧れていたポルシェのクラシックカーを手に入れました。最初はまるで自分の所有物っていう感覚がなかったですね。ドキドキして、自分の車なのに乗せていただいているという感じ。今でも購入した当初と変わらず新鮮で、ただ走っているだけで、なんでこんなに楽しいんやろう? って思う。エアコンがないので、真夏に乗ると汗だくになりますが、でも乗ります(笑い)」
屈託のない笑顔。その柔和な表情で人のいい“おっちゃん”を演じたかと思えば、ギョロリとした目付きで強面の悪人も演じる。幾多の作品に出ながら決して役柄の色がつくことはない。
「役者とは何か」と尋ねると、しばし沈黙した後に答えが返ってきた。
「優作さんが、『いいか、俺たち俳優はメッセンジャーだからな』とおっしゃっていました。自分の考えを声高に話すことはないが、使い手から命を吹き込まれ、誰かの意を伝える。役者は傀儡、操り人形なんです。役者という“入れ物”を通して、心の中に潜む“何か”をお客さんに感じてもらう。たぶんそれが役者というものじゃないかと思います」
スクリーンで見せる圧倒的な存在感。これからもずっと、國村は新たな顔を見せ続けてくれるのだろう。
【國村隼(くにむら・じゅん)】1955年生まれ、大阪府出身。俳優。『ガキ帝国』(1981年)で映画デビュー。リドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』(1989年)に出演。以後、数多くの映画、ドラマで活躍。『萌の朱雀』(1997年)で映画初主演を果たす。昨年、韓国映画『哭声/コクソン』の演技が評価され、韓国最大級の青龍映画賞にて外国人として史上初の男優助演賞と人気スター賞をダブル受賞。11月4日からベルギー・フランス・カナダ合作映画『KOKORO』が東京・ユーロスペースほかにて全国順次ロードショー。12月には『鋼の錬金術師』『DESTINY 鎌倉ものがたり』が公開。2018年にジョン・ウー監督『追捕 MANHUNT(原題)』が日本公開予定。
●撮影/平郡政宏 取材・文/戸田梨恵
※週刊ポスト2017年11月10日号