そして見逃せないのが、肉の多様化だ。今回はテーマが「和」「低カロリー」だったので豚バラ肉の忌避傾向は目立ったし、サバ、のどぐろ、金目鯛、サンマ、アジなどの魚を取り上げるラーメンが多かったが、他にも消費を伸ばしているジビエの鹿を軸に据えたラーメンもあった。
丼以外の観点で見ると、今回の決勝にはラーメン業界以外からのエントリーも数多く残っていた。「外野の参入」だ。和食の料理人も複数人、決勝大会に残っていたのはまだしも、和食店のホールの女性や、IPPUDO LONDON(一風堂ロンドン)のストアマネージャーであるポーランド人女性も決勝に残っていた。そしてそのいずれもが、従来の国内のラーメン店ではおよそメニュー入りしないであろうラーメンを出していた。例えば、焼きサバを乗せたごま味噌ラーメン、あるいは具材にビーツを使ったラーメン。巻きずしに至ってはカットされた太巻きをスープに沈める、寿司茶漬けのような食べ方提案もあった。
「スパイス&ハーブの可視化」「酸や柑橘」「肉の多様化」、そして「外野の参入」。今回のWRGPのラーメンの傾向を反芻してみると、現代の創作ラーメンは近年の国内における「食トレンド」を何かの形で取り込んでいる。そもそも日本のラーメンは中国から渡ってきた麺料理にそれぞれ独自の解釈を加えたものがいくつもの伝統へとつながり、その集合体が「ラーメン文化」と呼ばれるまでになった。
その昔、外国の製品をカスタマイズするところから日本の産業は発展してきた。やはりラーメンはまぎれもなく日本食である。