実際に朝食として召し上がるのは、「御祝先付の御膳」と呼ばれる料理だ。本膳で小串鰤焼き、浅々大根(大根の塩漬け)、菱葩というお餅。二の膳で割伊勢海老、栗を甘い汁で煮込んだ福目煮勝栗、雉の胸肉を焼いて熱燗を注いだ雉酒などがある。雑煮や屠蘇は出ないという。

 朝食を終えると、9時45分から「新年祝賀」と「新年祝賀の儀」が待つ。前出の久能氏がいう。

「天皇皇后両陛下は『祝賀』と『祝賀の儀』を合わせて数百人の方々と分刻みでお会いになり、夕方までずっと立ちっぱなし。しかも祝賀を述べる方々が両陛下の部屋に来るのではなく、彼らが待機している宮中内の複数の部屋を両陛下が移動されるのです。正装で重い勲章もつけておられますから、相当なご負担でしょう」

 平成25年の元日に両陛下が祝賀を受けた人数はなんと計686人に及んだという。前出の高森氏が解説する。

「午前中の『祝賀の儀』では、首相、衆参議院の議長、最高裁長官などが順番に天皇に祝賀を申し上げます。これにより、行政、立法、司法の三権よりも天皇の権威が上位に位置していることを、目に見える形で毎年確認しているのです」

「祝賀の儀」の源流は、飛鳥時代の「元日朝賀」まで遡る。朝廷で皇族や大臣以下役人たちが元日のたびに天皇に拝賀していたという。646年に行なわれたのが史料上の初見で、実に1300年以上前から行なわれていた儀礼なのである。

「午後からの『祝賀の儀』には、各国の大使ご夫妻が訪れます。それぞれの国を代表した全権大使から祝賀を受けるのが、首相ではなく天皇であることは、日本の“国家元首”が天皇であることを示しています。ちなみに陛下は、三権の長から祝賀を受ける時は壇の上に立たれますが、海外の大使の場合は互いに国を代表する立場ということで、壇を設けず同じ目線に立たれています」(同前)

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