それでも、同社が成功した最大の理由が給与レベルを世界化したことにあるのは間違いない。同社の競争相手はルーターではシスコシステムズ、通信設備ではエリクソンやノキア、スマートフォンではアップルだ。これらのグローバル企業に対抗していくために、ファーウェイは給与レベルを大きく引き上げて世界から最先端の優秀な人材を集めてきたのである。
また、ファーウェイの人事制度は社員の5%が定期的に淘汰されるという。しかし、私が在籍していたマッキンゼーの場合は毎年社員の20%ずつに転職指導していたから、まだ甘い。ファーウェイには「45歳退職説」もあるそうだが、これもリクルートの事実上の38歳定年制から見れば、厳しいとは言えない。それでも大半の日本企業に比べたら、ファーウェイのシステムがグローバルスタンダードに近いことは確かである。
実は、私は20年以上前に深センのファーウェイ本社を訪れたことがある。その時に瞠目したのは、全社員のうちエンジニアが約8割もいたことだ。しかも、会社の隣にアメリカ風の立派な一戸建てをたくさん作り、将来有望なエンジニアの社宅にして厚遇していた。
それを見て私はいち早く「もし、中国から世界化する会社が登場するとしたら、第一号はファーウェイだろう」と予言した。その当時からファーウェイはグローバル企業になる基礎条件を備えていたのである。
※週刊ポスト2018年1月12・19日号