最大の理由は、やはり芸能人をめぐる不倫報道と、それに対する世間の厳しい目線。この2年間、数えきれないほどの不倫報道があり、世間の嫌悪感情が高まる一方でした。そんなムードの中、かつてのように不倫を“甘美で切ない純愛”として描くと、放送局としても、主演女優にしてもバッシングのリスクが高いのです。
実際、スル妻を主人公に据えた『あなたのことはそれほど』では、主演の波瑠さんに対するバッシングが殺到し、本人が「しょうもないとか馬鹿とか最低とか言われても、観て感想を抱いてもらうっていうことで私は報われるような気持ちです」「私は美都には共感できないけど、毎日やらなきゃ仕方ない」と釈明のようなコメントを発表する異例の事態に発展しました。
以降も、週刊誌による不倫報道と世間の処罰感情はいっこうにやむ気配がなく、さらに女優本人と役柄を混同してクレームを入れる人が一定以上いたことで、「少なくともプライムタイムのドラマでは避けたほうがいい」というスタンスになっているのです。
また、視聴者にとってドラマのスル妻は、「自分は不倫しないけど、作品の中だけで妄想するファンタジー」であるのに対して、サレ妻は「『もしかしたらウチもありえるかも』と感じる、それなりのリアル」。前者が不倫の加害者であるのに対して、後者は被害者であり、現在の風潮を踏まえると、視聴者は被害者側に立って見るほうが安心して楽しめるのでしょう。
ただ、小室哲哉さんと小泉今日子さんをめぐる不倫報道から、世間の処罰感情が緩和しはじめているだけに、今夏以降の方向性は不透明。しばらくは不倫を“甘美で切ない純愛”として描く可能性は少ない気がしますが、サレ妻ばかりでは飽きられてしまうだけに、再びスル妻が主人公を飾る作品は生まれるでしょう。
◆サレ妻が演技派・仲里依紗の力を引き出す