「闇金が狙うのはもちろん”破産者”や”多重債務者”のリスト。貧乏人を狙い撃ちにするには一番の近道ですが、同業他社によって荒らされている場合も多いので、最近は官報もよく見ますね。」(Tさん)

 かつては役所、または所蔵する図書館でしか閲覧できなかった「官報」は、登録し費用さえ払えば、いつでもどこでも、ネットで確認ができる。官報には様々な情報が載るが、そのなかには自己破産の情報もある。それを参照して毎日、全国で何十何百人という新規破産者の名前、住所を確認し、破産者めがけてダイレクトメールを送ったり、営業の電話を行うのだ。Tさんによれば、自己資金50万円を種銭にして、現在は知人ら数人に協力をしてもらいながら、月利益「100万円」を目指している。

「三万貸し付けて五千円を抜く、という感じ。生活保護費の受給日前は、用意している三台の携帯が鳴り止まないほどで、顧客はざっと150人くらい。そのうち数人は”飛ぶ”可能性がありますが、まあ、そのリスクを差し引いても儲かる商売。飛ぶやつよりも返すやつの方が多いし……。学校の知人を誘ってもっと大々的に、組織的にやりたいですね」(Tさん)

 自己破産者など”ブラック客”を相手にするにはリスクがある。しかし、そういったリスクを負っている人ほど”顧客”になりやすい、そう言い切るTさんの説明は、一般人には理解し難いかもしれない。だが、困窮した人ほど、目先の利益や損得に捕らわれやすく、三万円の貸付で五千円を抜かれる暴利をもっても、文句の一つ出ない。しかも少額だから、律儀に返したほうが困った時にまた借りやすく、彼らにとっては”便利な存在”か、貯金箱のようなありがたい存在にすら思われるという。

 だから、飛ぶ客が一定数いようともそれは少数で、返す客が大半。100万、数千万の借金を飛ばした客でも、その日を生きるための数万円を飛ばして「借りられなくなること」を選ぶ客のほうが少ないのだという。事実、Tさんが貸付客に対し、暴言を吐いたり、会社や自宅まで出向き「取り立てた」ことはほぼない。その実態はまさに「ソフト闇金」なのだ。

 人に金を貸すビジネスは、法律で登録が義務づけられている。また、その場合の金利も定められている。Tさんが行っている貸付は当然、登録もしておらず、法定金利も守っていない。だがまったく悪びれる様子もなく、堂々と「闇金」ビジネスの拡大を宣言する現役大学生のTさん。捕まるリスクも低く、特に「儲かる」という事実があれば「手を引く理由はない」と笑顔で語った。

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