独身者の場合、親を世話できるのは自分だけだと思い込んだり、親族などから頼られたりして、盲目的に介護離職に傾きがちともいわれる。介護離職をすると再就職が難しいのも実情。思いのほか離職のリスクは大きい。
「離職に限らず、介護が始まったばかりの大変な時期は、有効な選択肢が見えていないことが多い。家族介護者にとっていちばん不幸でリスキーなのは、“選択肢が見えない”まま、介護を1人で抱え込んでしまうことなのです。しかし、選択肢、つまり介護のリソース(資源)はたくさんあります。まずはそれらを求め探す姿勢が大切です」
◆介護経験者のリアルな情報は大きな力に
有効な選択肢を探すために、何をすればよいのだろう。
「まず親の居住地の地域包括支援センターに行きましょう。介護や医療、福祉分野の専門スタッフが、介護保険申請の案内など、家族介護者が必要とする資源につないでくれますが、実際には窓口で何をどう相談したらよいかわからなかったという声も聞きます。
地域包括のスタッフは、各専門分野の情報はたくさん持っていますが、家族介護者自身が自分の状況や気持ちを理解していないことに、気づける人は少ないように思います。スタッフのかたから自分の困りごとを引き出してもらうのではなく、自分から必要な情報を引き出すコミュニケーションが重要です。
家族介護者の役割は、親に代わって困りごとを発信し、資源を集めること。その目的意識を持ち、地域包括を訪問する前に、親と自分の困りごとをリストアップして臨みましょう。 もちろん最初は誰もが“わからないことがわからない”状態。わからないとしっかり発信することでコミュニケーションをスムーズにします」
また和氣さんの主宰しているような介護者支援団体も強い味方になってくれるという。
「介護家族の“わからないことがわからない”状態を理解して、相談に乗れるのが介護者支援団体のよいところ。数多くの相談が寄せられるため、介護家族が困る状況、切実な思いなどの情報も集まり、介護者の経験に基づいた有益な回答ができるのです」
和氣さん自身もかつて介護者支援団体に救われたと言う。