「わが省の上層部はトランプ大統領の外交的な賭けが成功する可能性は極めて小さいと判断している。だから日本はいま“首脳会談に乗り遅れる”と焦ってベットする(チップをかける)必要はない。じっくり構えて、米朝交渉の結果を見極めてから動けばいい。
仮に、米朝交渉が進展した場合、日本の安全保障上のリスクも下がる。米国は北朝鮮にカネは出さないから、日本に経済協力を求めてくる。その時は“拉致問題の解決がない限りビタ一文出せません”と時間をかけて交渉すればいい。
カードはこっちにある。それなのに、下手にトランプ大統領に頼み事をすれば北に手の内をさらし、失敗すればトランプと一緒に泥を被ることになる」
河野外相も「北朝鮮の実験場でトンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命にやっている」と警鐘を鳴らし、長年拉致問題に携わってきた佐々江賢一郎・前駐米大使も、2月末にワシントンでの記者会見で「実質的に米朝対話の局面にあるとは思わない」と明言するなど米朝交渉の成功には否定的だ。
佐々江氏は大使交代のために帰国した3月20日に官邸で首相と会談し、「5月の米朝首脳会談が成功する可能性は低いという見通しを伝えた」(同前)とみられる。
だが、森友問題で落ち込んだ支持率を外交で挽回したい安倍首相にはそれが不満だった。なにより、「私の政権で拉致被害者を全員帰国させる」と国民に宣言した首相にとって、日朝交渉に乗り遅れることは面子にかかわる問題だ。