創刊から5年経った1985年、職場における男女の差別を禁止し、採用や昇給の面で平等に扱う男女雇用機会均等法が制定された。
「『とらばーゆ』がOLにもたらした最大の成果は、“仕事の情報は自分で取りに行く”という独立独歩の姿勢。OLたちが仕事にやりがいを求めて自分から行動したことが、雇均法の制定につながりました」(くらたさん)
こうした動きは、働く女性が会社という家族から独立していく第一歩となった。その後1991年のバブル崩壊を経て、会社の在り方を大きく変えたのは2004年の労働法改正だった。
法改正により派遣労働の範囲が拡大され、人件費抑制のため正社員を減らし、期間限定で雇えてリストラしやすい派遣社員に切り替える企業が続出した。以降、数度にわたる法改正で終身雇用制度が崩壊し、会社の「脱家族化」が進んだ。
その様子を描いて大ヒットしたのが2007年のドラマ『ハケンの品格』(日本テレビ系)だ。第1話の冒頭は、会社を挙げてお正月の餅つきをするシーン。まさに「会社=家族」を象徴する1コマのあと、そのすべてを否定する篠原涼子演じる「スーパー派遣社員」が登場する。仕事は優秀だが9時から5時までしか働かない彼女は、携帯の番号を職場の誰にも教えず、無駄口やおしゃべりを一切しない。会社の飲み会に参加する時は時給を要求する。
同ドラマのプロデューサーを務めた日本テレビの櫨山(はぜやま)裕子さんは、「私の周りでも同じことが起きていた」と打ち明ける。
「法改正によってテレビ局の現場も大きく変わりました。長年働いていたベテランの外部スタッフが社を去ったり、次々と新しい派遣社員が現れたりと、それまで家族のようだった会社の雰囲気が徐々に変わっていった。それはその後起きる経済のグローバル化のなかで必要な変化だったとは思いますが、私にとってはまるで戦争が起きたようなショックでした」(櫨山さん)
『ハケンの品格』は、会社に対する“家族幻想”が消滅して、正社員と派遣社員の関係がギスギスした時代ゆえに生まれたドラマだった。
1980年代以降、やりがいのある仕事を追い求めたOLを法や制度がサポートして、多くの女性が自立して働けるようになった。その一方で気がつけば、かつてOLたちを受け入れてくれた家族のような会社は消えてしまっていた。
※女性セブン2018年5月3日号