◆親方になりたきゃ1億払え!
そうした一門制をかたちづくる親方衆を巡る不可解な「掟」としては、「年寄株」の問題がある。株の数は105と決まっていて、取得できないと親方として協会に残れないので、高額で売買されてきた。
「2014年の公益財団法人化を機に売買は禁じられたものの、年寄株保有者の後継者任命権や、継承者から顧問料を受け取ることが認められた。
一昨年8月には、『春日山』の年寄名跡証書の引き渡しを巡る裁判で、横浜地裁が前の保有者に名跡取得の対価として1億7160万円の支払いを命じる判決を出したこともある。年寄株で巨額マネーが動くことを裁判所が認めた。それでも協会は表向き『売買は禁止している』として問題ないとする姿勢を貫いている」(ベテラン記者)
結局、次から次へと醜聞が出ても、自分たちに都合のいい組織運営を続けてしまっているのだ。相撲協会の公益財団法人化に向けた改革策をまとめる「ガバナンスの整備に関する独立委員会」の副座長を務めた慶応大学の中島隆信教授が指摘する。
「これだけ問題が噴出した以上、組織の在り方を根本的に見直す必要があるでしょう。たとえば、無免許運転が問題になった大砂嵐の師匠である大嶽親方(元十両・大竜)は、評議員を務めていた。評議員会は理事の選任・解任などを含め、強い権限を持ち、親方や力士の起こした問題を客観的に評価する立場でないといけない。それなのに不祥事の責任者の1人が評議員なんて、本来ならあり得ない話です。そうしたことが、当たり前に行なわれてしまっている」
それでも、組織が変わろうとしているようには見えない。口先だけの“改革”や“出直し”では、もう国技は守れない。
※週刊ポスト2018年5月4・11日号