高須:たしかに蚊帳の外なのかもしれないね。いま北朝鮮は核の力を盾にして、周辺国家といろいろ交渉しているわけだ。極端なことを言えば、「戦争をしないために、どうするか」という交渉だよ。そういう意味だと、そもそも軍隊を持っていないとされている日本なのだから、その交渉の場に立っていないことはむしろ正しいことなのかもしれないね。日本にはそもそも戦争をするという選択肢がないんだから、交渉すらできないはず、という考え方だね。ちょっと飛躍した論理だけど(笑い)。
でも、もしも「軍隊を持たない日本」を理想とするならば、今回の南北をめぐる情勢で「蚊帳の外」であることは、むしろ受け入れるべきだと思う。だから、ちょっと離れて情勢を注視している、いまの日本政府の態度は正しいのかもよ。
まあ、現実問題として、「日本は軍隊を持っていないからこそ、蚊帳の外にされている」という側面はあると思うね。結局のところ、北朝鮮もアメリカにはビビっているけど、日本にはそこまでビビっていない。北朝鮮が考えているのは、日本に攻撃されないようにすることではなく、日本からいかにしてお金を引っ張ってくるかということ。完全になめられている。これは本当に日本人としては悲しいことだ。日本政府も、さぞかしもどかしいだろうね。
──文在寅大統領は南北首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致について問題提起をしたとのことです。安倍首相は文在寅大統領との電話会談でその報告を受け、感謝を伝えたそうです。
高須:拉致問題については、絶対に解決してもらわないといけない。ここは絶対に譲れない。でも、北朝鮮としては日本に対して拉致問題解決と引き換えに、巨額の経済支援を狙っていることは自明だからね。単なる金づるにされないように、気をつけないといけない。
拉致問題において日本は完全な被害者であり、本来なら交換条件など出す必要もなく、無条件で被害者の身柄を引き渡すように請求できるはず。でも、それが難しい現状があるわけだ。だから、日本は泣く泣く経済支援をして、拉致被害者の問題を解決しなくてはいけない。日本は全く悪くないのに、どうしてお金をあげなきゃいけないんだ! そう思うのが当然だよ。
にも関わらず、「南北の融和ムードがある中で、日本だけが拉致問題解決を強く要求するのは空気が読めていない」みたいな風潮は明らかに間違っている。「平和に向けて歩みだした北朝鮮に水を差すな!」みたいな声があるというのだから、本当に信じられないよ。