「会談で拉致問題の話題が出たことは大きな一歩でした。しかし、具体的にはなにも合意されず、トランプ氏は“これから話し合う”と述べるにとどまりました。金氏のこの話題に関する反応もわかりません。そもそも北朝鮮は『拉致問題は解決済み』という姿勢を崩していません。
米朝の合意文書には『朝鮮戦争での行方不明者の帰還や遺骨の返還』が盛り込まれただけに、拉致問題では具体的な進展がなかったことが悔やまれます。これから緊張緩和が進む中で、拉致問題だけが取り残されていかないように、いかに日本政府が交渉していくかが問われています」(前出・国際部記者)
◆夫の入院先で一緒に点滴を受ける
「人生を絶望で終わるのか、がんばってきてよかったとなるのかわからないが、金正恩氏には人間としての“親の心”をわかってほしい」
早紀江さんは米朝会談前日の会見でそう語った。早紀江さんは今年、82才になった。めぐみさんが失踪してから約40年。被害者家族の高齢化は、もう待ったなしの状況に追い込まれている。
昨年12月12日には拉致被害者の増元るみ子さん(64才)の母・信子さん(享年90)が、娘との再会を果たせないままこの世を去った。松木薫さん(65才)の母・スナヨさんは2014年に92才で、松本京子さん(69才)の母・三江さんも2012年に89才で亡くなった。政府が認定している未帰国の北朝鮮拉致被害者の両親で、存命しているのは横田さん夫妻を含め4人だけ。早紀江さんは近年、「私たちにはもう時間がない」と繰り返してきたが、その思いは強まるばかりだ。
4月4日には、二人三脚で闘ってきた夫の滋さんが、入院を余儀なくされた。4月15日には安倍首相が見舞いに訪れたが、会話もままならず、2か月以上たった今も退院できない状態が続いている。
滋さんは2005年、国の指定難病の1つ「血栓性血小板減少性紫斑病」の診断を受けた。血小板の塊(血栓)が抹消の血管を詰まらせることで出血する病気で、完治が難しいため、滋さんは拉致被害者家族会の代表を退いた。
「数年前から急激に体力が落ち、階段の昇降が難しくなり、最近は歩行もままならないといいます。転倒してけがをすることを恐れて、自分で立ち上がれなくもなっているので、トイレの世話も早紀江さんがされているそうです。
もう85才ですからね…。食事の量も減ってきて“危ない”ということで、入院されました。言葉もうまく理解できないので、会話も難しくなってきているそうです。それでも、ふと“めぐみちゃんに会いたい、会いたい”ということはお話しされるようです」(家族会関係者)
滋さんを支える早紀江さんの体力も限界に達してきているに違いない。