「早紀江さんは滋さんの看病だけでなく、拉致問題への理解と支援を得るために講演活動を積極的にこなし、その回数はすでに1300回を超えています。家族会関連の書類の整理や会見などのほか、家庭の主婦として家事もこなさなければいけない。めぐみさんの弟とその子供も一緒に暮らしているそうで、孫の世話にも追われているそうですから、負担は相当のものです。
最近は滋さんが入院する病院で点滴治療を受けることもあるそうです。なんとかめぐみさんを取り戻したいと、疲れた体に鞭打ってがんばってこられましたが、体力的にも精神的にもかなり厳しい状況に追い込まれています」(前出・家族会関係者)
◆今回を逃したら永遠に帰って来ない
そんな中、今年2月頃から突然、金正恩氏が急激に態度を軟化させ始めた。早紀江さんたち家族会がこの流れを“最後のチャンス”として期待をしなかったはずはない。そして決まった米朝首脳会談。
早紀江さんは5月中旬、「ちょっとだけ希望を持ちながらあまり喜びすぎると大変なことになるので…」と複雑な胸中を明かした。家族会の代表を務める飯塚繁雄さん(80才)は会談前日の会見でこう語った。
「今回を逃したら私たちの家族は永遠に帰って来ないという覚悟をしないといけない」
もう本当に時間がない──家族会の悲痛な思いが伝わってくる。ある政治ジャーナリストが語る。
「北朝鮮は拉致問題の解決を訴える安倍政権を嘲笑しているし、トランプ大統領からも拉致問題を重視している姿勢は見えません。せっかく北朝鮮側から歩み寄ってきている千載一遇のチャンスでも、安倍首相が呆然と眺めているだけでは被害者が帰ってくることはありえません。“外交の安倍”を自称し、拉致被害者の全員帰国を政権の公約に掲げているのであれば、この米朝会談の機会を生かし、あらゆる手を使って、北朝鮮当局との拉致問題の交渉のテーブルをセッティングすべきです。今までの安倍首相の拉致問題交渉はことごとく失敗してきましたが、今回の失敗は許されません」
滋さんは病室に飾ってあるめぐみさんの写真を眺め、会談に期待を寄せていた。そんな病床の滋さんに、早紀江さんはこう声をかけたという。
「もうすぐ帰ってくるかもしれないから、がんばらなきゃいけないよ」
※女性セブン2018年6月28日号