「走行中の新幹線は車両外へ出ることはできません。たとえば、ゴルフクラブを持った暴漢が車内で暴れ出した場合、やはり最初にやるべきは、別の車両へ逃げること。あるいはトイレが空いていたら中に入って鍵を閉め、扉の外から聞こえてくる音がどんなに気になっても、絶対にドアを開けずに隠れ続けることです」
逃げる際に余裕があれば、各車両にある非常ブザーを押しておくのも“新幹線特有”の対策だという。非常ブザーと各車両のカメラが連動しているため、「ブザーを押せば、車掌はどの車両で何が起きているのかを一目で把握できるようになっています」(JR東海東京広報室)という。つまり、逃げると同時に「助け」を呼ぶことができるのだ。
ただし、日本防災教育訓練センターのサニーカミヤ氏は「話題になったからといって、座面シートにこだわらないで」とくぎを刺す。
「新幹線は通路が狭く、乗客が一斉に逃げようとすれば、かならず通路で渋滞が起きます。そんな状況で、多くの人がかさばる座面シートを抱えていたら、ますます避難速度が遅くなってしまう。暴漢の近くにいる人が座面シートで身体を守ろうとするのは意味がありますが、離れた場所にいる人は『何も持たず、急いで逃げる』が原則です」
※週刊ポスト2018年6月29日号