濱潟:僕は一般企業に入ったわけですが、防衛大で何を一番学んだかと言うと「フォロワーシップ」だったんじゃないかなと思います。防衛大では、何もできない1学年の時から無理難題を求められます。そんな中で、主人公の近藤も言っていましたが「みんながいたから」「ひとりじゃないから」耐えられ、学びを得て成長していくことができるんだと思います。
二階堂:人の力を借りることは悪いことじゃないし、成長のためにも必要ですね。漫画家という仕事をしていても、近い状況が出てきますよ。基本的に漫画家はネタを誰かに話すとか、意見をもらうということをしたくないものなんです。1人でやりたいし、できていない部分を指摘されるのは辛いですからね。でも、本当は「ここはいいよね」「ここはこうしたら」と言われることが大事だったりするんです。それが心にグサグサきたとしても。
僕は言われたことを直すタイプで、言われたことをしっかりやっていくのが大事だと思っています。それが結局、1人でやるよりも近道なのだと思います。
濱潟:最初から全部うまくいくことなんてありませんよね。僕も入った当初は上級生からの厳しい指導が日常茶飯事。ベッドメイキングが合格点に達してないからと、木にベッドシーツがつるされていたことも(笑)。やりたくないこと、逃げたいこと、たくさんありました。でも行動する。うまくいけばそれでいいですし、極端な話、考えて行動した結果うまくいかなくてもいい。少しでも前に進まないと、そこで成長はストップしてしまう。
二階堂:だからやり続けるんですね。漫画も同じで、描き続ける、少しでも面白くする。少年サンデーで連載している漫画家の先生たちは驚くほど当たり前のようにやっていることですね。だから、僕も諦めたり、現状に満足したりはしません。むしろ振り落とされないように必死です。
僕は今、少年サンデーで『あおざくら』を連載していますが、もともと少年サンデーで華々しくデビューしたわけじゃないんです。雑誌をまたいで這い上がっていくというムチャクチャなことをしてきた。だから、思うんです。僕のこれまでは全部、逆境だったんじゃないかなって。さんざん言われましたからね。「お前なんかが漫画家になれるわけがない」、「連載なんて絶対ムリだ」って。濱潟さんの著書『防衛大式 最強のメンタル』にもありましたが、「逆境の神さま」に愛されていたんだと思います。
濱潟:逆境ほどいい訓練はありません。と言うと厳しそうですが、ストレス耐性を高める時期であり、行動の質を高めてくれます。これを知っていると知らないとでは全然違うと思うんですよね。目の前の困難なことは捉え方ひとつでどうにでも変えることができると思っています。
特に社会人1~2年目や異動・昇進したての人は、どうしても精いっぱいになってしまうと思います。厳しいノルマとか理不尽な要求とか。もっといえば、理不尽じゃないことも理不尽に感じてしまうことも。そういう時に、『あおざくら』や僕の本を読んでもらえたら嬉しいですね。精神的に追い詰められた時に割り切って、粛々とやっていくことができると思うんです。そうして、求められることに対して全力で取り組んで、圧倒的な結果が出せるようになっていくと思います。