まず、働き方改革関連法案は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)や同一労働同一賃金の導入が柱で、このうち高プロについて野党が反対している。だが、すでに本連載で指摘してきたように、働き方改革は企業が各々の社内事情に応じて自主的に取り組むべき課題であり、政府が“上から目線”で頭脳労働者にまで縛りをかけるのは経営に対する冒涜にほかならない。
IR実施法案にいたっては笑止千万だ。カジノを含むIRを全国で最大3か所整備するというが、これは日本進出を目論むラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長が有力支援者であるトランプ米大統領の要望に安倍首相がおもねり、その利権に政治家が群がっているだけの話である。
つまり、この二つの法案は成立しようがしまいが、国民生活にはほとんど影響がないのである。
その一方で、いま日本が直面している重要課題は、ことごとく放置されている。なかでも最大の問題は、世界的に見て、様々なシーンで日本の存在感が失われていることである。
たとえば、世界中が北朝鮮非核化問題とアメリカのイラン核合意離脱問題の行方を注視しており、両国とも日本にとって深い関わりがあるにもかかわらず、安倍政権はアメリカに従属するだけで、国益につながる独自の外交は何も展開できていない。その間に中国は北朝鮮の庇護者として存在感を一段と増し、韓国も米朝間の仲介者として一応の役割を担っている。
かたや日本は「第8回太平洋・島サミット」を福島県で呑気に開催したぐらいである。安倍首相はロシアに行ってプーチン大統領と21回目の日露首脳会談を行なったが、北方領土返還に向けた実質的な成果はなかった。