角居厩舎のグローブシアターは、3歳春1勝馬で弥生賞に挑戦しコンマ4秒差(8着)の競馬をするほどの素質がありましたが、2勝目を挙げたのは8月。1000万下のレースでは4、4、3着ともどかしいレースが続いていました。立て直して臨んだ5月の白川特別(2400m)では2着に3馬身差をつけて圧勝。ここで準オープンに昇級ですが、降級の恩恵にあずかり、6月9日にはやはり1000万下の同距離三田特別に同じ鞍上で出走して勝つことができました。

 同様にブラックスビーチは、昨年4月に未勝利を脱出したばかりで向かったオークストライアルのスイートピーSを勝っていたので、降級前の収得賞金は1400万円。クラスは1600万円以下です。古馬と2度走って手応えを掴み、6月2日、収得賞金が700万円となったところで1000万円下の三木特別に出走させました。このレースではダービーを獲ったばかりの福永騎手が巧く乗ってくれて勝つことができました。

 この時期は「待ってました」とばかりに、こういう使い方をする馬が多い。再昇級してから放牧に出せば、さらに力を伸ばしていくことができ、この制度があることで、じっくりと力を溜める意味合いも強い。換言すれば、4歳で思ったような結果が出せない馬にとっての救済制度でした。

 そんな降級制度も来年からの廃止が決まりました。これによって競馬界は、どう変わっていくのでしょうか。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位(2018年6月17日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が発売中。2021年2月で引退することを発表している。

※週刊ポスト2018年7月6日号

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