もともと事務の官房副長官は、官僚の最終ポストと呼ばれる。事務次官より上位に格付けされ、中央省庁を横断的につなぐ調整役を担う。各省の幹部人事にも詳しい杉田は適任とされてきた。1987年発足の竹下登内閣から1995年の村山富市内閣まで、実に8年にわたり官房副長官を務めてきた石原信雄に、内閣人事局について意見を尋ねたことがある。
「私は現政権のことを存じ上げないので論評する立場にはありません」
そう謙遜しながらも次のように指摘してくれた。
「杉田さんが官房副長官になるときにお会いし、話をしました。基本的に人事は各省が責任を持ち、よく人を見ているわけですから、各省の意見を尊重するのがいいんじゃないかと、私自身そうしてきたものですから、そう申し上げました。2014年の人事局設置以降、基本的に幹部人事は官邸が権限を持ち、その権限は政策遂行上有効なんですが、あまり使いすぎると各省が委縮してしまう。各省の諸君が所管行政について十分意見を言えるような環境は残してもらいたい。委縮してしまうと行政全体が沈滞しますから、そこはいちばん政権に配慮してほしい点です」
もとより内閣人事局という器そのものが悪いわけではない。が、使う側に思料が足りなければ、日本の行政にとって最悪の結果を招きかねない。
※週刊ポスト2018年7月13日号