◆680人を一元管理
内閣人事局構想が実現に向けて進みだしたのは、2012年12月に安倍晋三が政権にカムバックし、稲田朋美を行革担当大臣に据えてからだ。稲田は翌2013年4月、唐突に内閣人事局構想を発表。「総理の意向」を背景に霞が関を説き伏せていった結果、2014年5月30日、初代国家公務員制度担当大臣に就任し、念願の内閣人事局をスタートさせる。先の内閣人事局企画官の辻が、組織構造についてこう説明してくれた。
「内閣人事局の人員はおよそ170人。従来の総務省人事局と行政管理局の中の組織管理部門を内閣官房に移管し、中央省庁の部長級以上の候補者680人が人事の対象になっています」
行政管理局の組織管理部門とは、無駄な部局をなくしたり、新たな部局をつくったりする器づくりを担う部署のことだ。
「たとえば政府の部局は法令でその数が定められているので、新しい局をつくれば、その分減らす局が必要になる。それを検討するのが組織管理部門です。これまで新しくつくる局長の任命は各省の大臣が担うので、総務省では人選にはタッチしませんでした。一種のファイアーウォール(組織同士が介入できないようにする防火壁)が存在したのですが、それをなくし、内閣人事局でどちらも主導することにしたわけです」(同・辻)
内閣人事局では、内閣の重要政策に対応するため、「適材」と「適所」を一元化して決める、と謳う。従来はその「適任者」選びを各省庁に任せ、総務省に「適所の器」をつくらせる役割分担により、恣意的な人事を避けてきた。が、新設された内閣人事局制度なら、首相の気に入った省庁の幹部のために新たな部局を創設し、その局長に抜擢することもできる。そこについて辻はこう反論する。
「反対意見があったのはたしかです。ただ、民間の会社だと、能力のある人のために部局をつくることは日常的におこなわれています。その意味からも、問題ないとされています」