◆「官邸の守護神」の留任
たとえば昨年12月26日に発表された法務省人事の閣議決定が、そのことを象徴的に示している。閣議で唐突に事務次官候補とされていた刑事局長の林真琴の名古屋高検検事長への異動と、事務次官の黒川弘務の留任が決まった。だが、そこにいたるまでに何が起きたのか、いまだ藪のなかだ。
奇しくもこの法務省人事は、政権に近いスパコン業者の補助金詐欺やリニア新幹線の談合に続き、森友学園への国有地売却を巡る財務省の背任捜査のさなかのこと。永田町では、「官邸の守護神」と呼ばれる黒川の事務次官留任を官邸が要望していたとされる半面、その人事を押し通したのはなぜか法務大臣の上川陽子だったといわれた。
当初、黒川の地方の検事長就任を予定した法務・検察の人事原案は、大臣の上川も了解していたはずだ。が、そうなると官邸の守護神が中央官庁を去ることになる。その間、閣議決定を前に、水面下で上川大臣を交え、安倍首相や菅官房長官が話し合われている。それが内閣人事局の「任免協議」にほかならない。
つまり黒川の地方異動を上川自身がひっくり返したとなると、それは官邸からの指示か、あるいは官邸への忖度ではないか。結果、法務・検察関係者からは、おかげで人事が狂い捜査がやりづらいというぼやきが聞こえてくる。
そんな霞が関の官僚たちの生殺与奪を握る内閣人事局では、首相と官房長官に次ぐ局長ポストを官房副長官が兼務する。官房副長官には国会議員が就く政務と官僚OBの事務という二人がいるが、初代局長は加藤勝信、次いで萩生田光一と首相の忠臣代議士が就き、昨年8月から警察庁出身の杉田和博に任を託されている。この期に及んだ官僚からの抜擢は、霞が関から沸き起こる不評を気にしたせいだろうか。