◆政治的ブラックボックス
中央省庁の幹部候補680人の配置を決めるプロセスは、まず各省庁に人事原案を提出させるところから始まる。それは従来の内閣と変わらない。問題はそのあとだ。
たとえば財務省人事では、事務次官によるセクハラ問題で主計局長の岡本薫明の次官昇進原案が官邸の意向によって早々に見送られ、今も人事が迷走を極めている。また、その財務省の国有地払い下げを巡る大阪地検の捜査にも、後述する法務省人事における官邸の影が囁かれてきた。流行語にもなった「忖度」の意味するところは、官邸による恣意的な人事を恐れてきたからにほかならない。
内閣人事局の任用プロセスでは、省庁から提出された人事原案に対し、「適格性審査」と「幹部候補者名簿の作成」を官房長官がおこない、そこから「任用候補者の選抜」、さらに「任免協議」という段階に移る。
わけても官邸による影響力を行使できるのが、この「任用候補者の選抜」や「任免協議」だ。とくに「任免協議」に参加を許されるのは、首相と官房長官、官房副長官、それに各省庁の大臣で、事務方は排除される。首相の安倍はもとより、官房長官の菅義偉による霞が関人事が取り沙汰される所以だ。
「その前の適格審査などは、さすがに次官クラスの人で審査に通らない人はいませんので、そこで差し戻されることはない。だがそこから先の『任免協議』などで何が話し合われているのか、については、われわれ(事務方)の知る由はありません。協議のあと人事検討会議が同日に開かれ、閣議を経て人事が発表されるだけ。その前段階の『任免協議』は、いつおこなわれているのかさえ知りません」(内閣官房関係者)
基本的に中央省庁の人事原案は、任命権者である各大臣が了承している。その原案が拒否されたり、差し戻されたりする場が、「任免協議」だ。つまり、ここが完全な政治的ブラックボックスになっているのである。