佐藤:それに加えて当時、総理大臣の権限が弱く、内閣と枢密院が対等の関係にあるという権力が分散する仕組みも邪魔をして、国民を束ね切れなかった。
私にとって日本のファシズムは竹馬のイメージなんです。「持たざる国」がムリをして、どんどん高い竹馬に乗って、最後には匠の技みたいにバランスを取っていたんだけど、転んで大変なことになった(苦笑)。
片山:普通は転ばないくらいの高さで止めておくという微温的な結論に落ち着くはずですが、「持たざる国」が「持てる国」と張り合うにはそんなことは言っていられなかったのでしょう。
佐藤:ここで私が注目したいのが「持たざる国」が生んだ日本独自の精神主義です。その一端が、宮崎駿さんの『風立ちぬ』にあらわれている。主人公の堀越二郎は美しい飛行機を作りたいと零戦などの開発に邁進する。映画では、飛行機に魅せられた純粋な設計者として美化されていますが、実際は馬力のあるエンジンを作れないから軽い飛行機を作るしかなかっただけです。それを美しいという言葉でごまかした。
片山:資源がないから、装甲を薄くして小型化する方に力を注いでいく。結果、スピードは出るけれど、簡単に撃ち落とされる。でも美しいからそれでいい。
◆念力主義の行き着く先