──なぜ、マツコは“盛らずに”自分をさらけ出せるのでしょうか?
「マツコは、『肥満』『ゲイ』『女装』への偏見が強い時代に育った。子どもの頃、鴨川シーワールドでトドのショーを見た時、マツコは『これは私だ』と感じた、というエピソードがあります。トドは単なる見世物になっている。芸でも何でもない、ただ飛び込むだけでも、喜んでくれる人がいる。自分は太っていることに悩んでいたけど、それで喜んでくれる人がいたら自分はいいじゃないかと。
また人前での女装の始まりは、小学校の頃の学芸会で中森明菜の歌を女装して歌ったことでした。そのように、パフォーマンスをすることで偏見を跳ね返し、自分だけの居場所を作ってきた」
──マツコを「毒舌」と表現する人たちもいますが、そんな一言で片付けられるような簡単な人物像ではないんですね。
「マツコの基本的な信念は、自分をごまかさずに生きること。たとえば、『田園都市線沿線に住もうとしている人は本当に幸せなの?』と疑問を投げ掛けています。電車の混雑率も高いのに、イメージにばかり惹かれてたまプラーザや二子玉川に住もうとしているのはどういうことなんだと。真実を突いていますよね。それが『毒舌』と評される場合もありますが、本質的には単なる悪口ではありません。一方で、自分も若い頃は『西武』での買い物にステータスを感じていた。そのような過去も、隠さずにしゃべる。
マツコは嘘をつかず、正直に話す。それが、共感を得ている大きな理由だと思います。田園都市線の話にしても、私たちはそう思ったとしてもなかなか言えないですよね。それに、かつて自分も同じようなことをしていたと正直に告白する。人間って、自分の弱みを隠したくなるじゃないですか。全部さらけ出せるのが、マツコの凄さだと思います。本人は、毒舌とはあまり思ってないんじゃないですか。視聴者は快感と思っているし、共感が大きいのではないでしょうか」