鈴木:10年近く前まではヤクザは世襲が多かった。楽して儲かる仕事だったから。特にバブルのころは顕著でした。だけど、いまは儲からないし、先も見えない。だから、「自分の息子はヤクザにしない」というのが当世ヤクザの正しい思考回路ですよ。
溝口:もっとも、勉強ができないと結局、ヤクザになってしまう。そっちのほうが入りやすいからね。山一抗争のときに、ある幹部の家に行ったら、大学在学中の息子がいて就職先が見つからず困っていた。
鈴木:テレビでドンパチの様子が連日放送されていたわけですしね。親が当事者の組の幹部となれば就職は厳しい。
溝口:当時ですら親兄弟がヤクザだと就職に障っていたわけで、暴排条例も施行されたいまはなおさらです。建前上は差別してはいけないことになっていても、やはりヤクザの子供が一流企業に就職するケースは珍しい。
鈴木:昨年、京都府立医科大学が、六代目山口組直参である淡海一家・高山義友希総長が拘禁を逃れるためにウソの診断書を提出していたとして、京都府警から虚偽有印公文書作成の疑いで強制捜査を受けましたが、大学出で六代目山口組の直参まで上りつめたのは高山総長くらいでしょう。
溝口:高山総長は京都という土地では今でも名士ですからね。彼のオヤジも有名なヤクザですが、息子には「ヤクザになるな」と言っていて、高山総長は東海大学を卒業して地銀に勤めていた。それがオヤジの死後に弘道会の舎弟になって、すぐに直参に取り立てられた。