原告の元徴用工(時事通信フォト)

 背景には、政権交代のたびに前体制の不正や腐敗を執拗に追及する、韓国政治特有の“恨(ハン)の連鎖”の影響もある。

「昨年9月に長官となった金氏は、前任者の長官の時代に、裁判所が朴槿恵・前政権の意向に沿った判決を下していたとみて調査を進めていた。そのなかで、保守派の朴政権が日韓関係の悪化を懸念して元徴用工裁判が進まないようにしていたという疑惑が浮上。検察によって関係者が逮捕されている。上告から5年にわたって塩漬けになっていた今回の裁判の判決が出たのは、そうした流れのなかでのことです」(同前)

 しかも、文氏をはじめとする韓国政府の首脳は、元徴用工への賠償が解決済みであることをよく知っているはずなのだ。

「2005年のことですが、盧武鉉政権の下で、官民合同委員会が組織され、日韓請求権協定の交渉文書の調べ直しが行なわれました。その際にも、徴用工の補償問題は、すでに解決しているという見解がまとめられています。そして当時、盧大統領の側近として秘書官を務め、政府側の委員として委員会に参加していたのが文氏なのです」(同前)

 無理筋を承知の上で、反日判決が導き出されたと考えられるのだ。

“反日”は、韓国では根強い人気取りの手段だ。朝日新聞元ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏はこうみる。

「南北融和ばかりを先行させて、経済対策や雇用拡大のための施策に着手しない文政権に対して、格差拡大に苦しむ若年層を中心に、支持率低下が進んでいる。そうしたタイミングだからこそ、“反日判決”が出てきたのではないか」

◆「経済は助けて」の虫のよさ

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