安倍晋三首相や河野太郎外相ら政府首脳はもちろん、日本のメディアも当然、判決に対しては厳しい論調で足並みが揃っている。
慰安婦問題で「強制連行があった」とする吉田清治証言を報じ、2014年に記事の撤回と謝罪に追い込まれた朝日新聞さえも、〈判決は日本の政府や企業にとって受け入れられないもの〉(10月31日付朝刊)と批判した。
それほどまでに、判決の問題性は明白なのだ。だが、韓国では元徴用工やその遺族による同様の訴訟は14件あり、被告となっている日本企業は約80社に及ぶ。今回の“判例”をもとに賠償命令が相次げば、補償は莫大な額となる。
「韓国では約22万人が元徴用工と認定されていますが、軍人・軍属が7万人ほど含まれるとされ、労働者としての徴用工は15万人程度とみられている。仮に今回の判決に倣って15万人に対して1000万円ずつ払うとなれば、総額は軽く1兆円を超えてしまう」(前出・西岡氏)
前川氏が「国交正常化の前提となっていた合意を反故にするのですから、事実上の“国交断絶”を突きつけたに等しい」とコメントするように、両国が国交を樹立するにあたっての“大前提”を覆す判決なのだ。前川氏はこう語る。
「“国交断絶”するつもりなら、韓国政府がはっきりそういうべきでしょう。実際に断交したら、真っ先に困るのは韓国経済ですから、そんなことはいえるはずもない。経済では依存して、反日を煽るのだから究極のダブルスタンダードではないか」
いつになれば、法治国家同士、先進国同士としての関係を築けるようになるのだろうか。
※週刊ポスト2018年11月16日号