在日ベトナム人の増加は松戸市だけに限った動きではなく、日本全国に広がっている。
法務省の在留外国人統計によると、震災が起きた2011年末、在日ベトナム人は約4万4400人だったが、6年半後の2018年上半期には約29万1500人と7倍近くに膨らんだ。フィリピン(約26万7000人)を抜き、中国(約74万人)、韓国(約45万人)に次いで3番目だ。
在日ベトナム人の歴史を溯ると、1980年代、ベトナム戦争から逃れた「ボートピープル」と呼ばれる難民の流入が、その始まりと言われる。しかし、ここ近年の留学生、技能実習生のブームにより、在日外国人社会の中で一気に存在感を増すようになった。
滞在資格の中で最も多いのは、技能実習ビザである。在日ベトナム人のほぼ半数を占め、2012年末の約1万7000人から2017年末には約12万4000人に急増した。一方、中国人は同期間に技能実習生が4割も減っており、実習生の受け入れを支援する国際研修協力機構(JITCO)の担当者は次のように説明する。
「中国の経済成長に伴って技能水準が上がったため、これまでのような中国人は来日する必要がなくなり、人数減につながった可能性がある。ベトナムは技能実習生の送り出し機関が他国に比べて多く、海外派遣に積極的な姿勢が増加の背景にあると思われます」
留学生と技能実習生に加え、今後新たな層として注目されつつあるのがIT人材だ。リンちゃんの父、ハオさん(36)もその1人として2007年に来日した。
日本国内ではIT業界の人材が不足しており、中小・スタートアップ企業は、IT大国インドだけでなく、ベトナムのIT技術者にも着目している。安い人件費に加え、若い技術者が豊富なためだ。経済産業省の担当者は、対中関係を踏まえてこう説明する。