「これまで中国でソフトウエアの開発をしていた日本のIT企業は、中国の賃金上昇に伴い、一定の技術を持つIT人材が集まるベトナムにシフトしました」
日本政府は昨年11月、技能実習制度の対象業種に「介護」を追加した。現在は、単純労働の分野における新たな在留資格の創設も検討中だ。ベトナム人をはじめとする在日外国人は、今後も増加の一途を辿るだろう。しかしその裏で、新たな問題も顕在化している。
◆ずらりと並ぶ位牌
案内された部屋の棚に、名前、年齢、死亡日が墨で書かれた位牌81柱がずらりと並ぶ。その一角に立て掛けられた、リンちゃんの遺影が、私の目に留まった。一家で東京タワーを訪れた時に撮影した写真で、リンちゃんは帽子をかぶり、にっこり微笑んでいる。この寺院のベトナム人尼僧、ティック・タム・チーさん(40)が、リンちゃんの葬儀を執り行ったためだ。私は線香に火を付け、そっと手を合わせた。
ここは港区芝公園近くにある浄土宗の寺院「日新窟」。JR浜松町駅から徒歩数分、とあるビルに入居している。
81柱はいずれも、2012年から今年7月までに亡くなったベトナム人の技能実習生、留学生たちで、年齢は20代~30代が中心だ。ほとんどが心筋梗塞などによる自然死だが、うち3人は自殺だった。
タム・チーさんによると、技能実習生の男性1人は、神奈川県内で塗装業に携わっていたが、今年7月に自殺した。現場からは遺書も見つかったという。
「会社の人に聞いたところ、遺書には『私はダメな人間です。お父さん、お母さん申し訳ないけど、私の分は弟に任せます』という内容が書かれていたそうです」