文化放送のラジオ番組は15年継続中(写真:榎本壯三)

「1979年に武道館で2日間連続公演を行ない、当時の日本のミュージシャンとしては凄いことだったと思うんですが、スポーツ新聞ではベタ記事扱い。では、どうやって日本のロックの市民権を獲得するか。それを考えることにエネルギーを使いました。ビッグマウスを装って『ロックは格闘技だ』とぶち上げ、1981年に花園ラグビー場でライブを行なったのも、そのひとつです」

 そのときは熱狂した聴衆1万人以上がステージに殺到し、暴動寸前になるという伝説を残した。他にも、都庁が建つ前の広大な空き地で3万人近くを集めてライブを行ない(1983年)、両国国技館を初めてコンサート会場に使う(1985年)など、耳目を集める初の試みにいくつも挑戦してきた。甲斐バンドは道なき道の開拓者だった。

「人生に目指すものがあれば、勝つことにも負けることにも同じ意味がある。成功にも失敗にも。そう思ってやってきました。特に男は、場数を踏み、体で覚えないと駄目な生き物ですから」

 ちなみに、甲斐が5歳のときに父親が借金のために失踪するなど、幼い頃から今に至るまで、私生活でも場数を踏んできた。

 交友関係は広く、むしろミュージシャン以外とよく付き合ってきた。船越英一郎、吉岡秀隆、江國香織、大沢在昌、萩尾望都、野田秀樹、小林よしのり(小学校から高校まで同級生だ)……次々と名前が挙がる。映画や演劇やスポーツにも強い関心があり、極力会場に足を運んできた。総合週刊誌とスポーツ紙にはすべて目を通す。話題豊富なことはインタビューでも窺えた。

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