安倍晋三首相が2018年10月に北京を訪問し、中国との新たな協力関係をうたったことに懸念を示す米側の関係者たちも存在する。だが私は安倍首相は中国の本質とトランプ政権の対中認識をよく理解しており、アメリカとの基本部分での連帯はゆるがせにしないとみている。
そもそも今回の日中接近は中国側の動機や変化が主因である。中国は数年前まで安倍首相が靖国参拝をしないと約束することや尖閣諸島の領有権について中国側との交渉に応じることを訪中の条件として迫っていたのだ。それが少なくとも表面上、軟化し、譲歩した。トランプ政権が断固たる対中政策をとったことで中国首脳が仕方なく日本との融和を求めたのだろう。
●エドワード・ルトワック/1942年ルーマニア生まれ。ロンドン大学、米ジョンズ・ホプキンス大学で学び、国防省長官府任用。現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)上級アドバイザー。著書に『日本4.0』『戦争にチャンスを与えよ』(ともに文春新書)などがある。
■構成/古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
※SAPIO2019年1・2月号