ライフ

【著者に訊け】森詠氏 警察小説『総監特命 彷徨う警官3』

森詠氏が『総監特命 彷徨う警官3』を語る

【著者に訊け】森詠氏/『総監特命 彷徨う警官3』(上・下)/各800円+税/KADOKAWA

 森詠著『彷徨う警官』シリーズの主人公〈北郷〉が、蒲田署の強行犯係から警視庁捜査一課特命捜査対策室7係の係長代理に抜擢されたのは、東日本大震災から間もない2011年4月のこと。この、よく言えば孤高の精鋭、悪く言えば〈ゴンゾウ〉の吹き溜まりでは広域指定の未解決事案を専ら手がけ、シリーズ第3弾『総監特命』ではなんと、〈赤衛隊による東洋新聞襲撃事件〉を扱う。

 1987年5月3日、東洋新聞横浜支局で記者2名が殺傷された同件を始め、一連の赤衛隊事件には既に時効が成立している。が、翌年に東京五輪開催を控える中、時の警視総監〈西田甫〉は〈テロに時効なし〉として7係に再捜査を命じたのだ。

 むろん赤衛隊は赤報隊、東洋新聞横浜支局は朝日新聞阪神支局のもじりであり、森氏は赤報隊事件の真相に虚構を通じて迫ろうとする。それこそ1977年刊行の初著書『黒の機関』にはこうある。

〈この機を逃してしまえば、未来の歴史に対し、われわれもまた歴史を歪曲してきた共犯者になるのを覚悟せねばなるまい〉

「これは元々ジャーナリスト志望だった私の信条でもありますね。特に私の場合、ノンフィクションでは書けないことを書くために小説に転向した部分もありますし、たとえ娯楽小説であっても大人の鑑賞に堪えうる真実や批評性がなければ、かつての同志たちに顔向けできないといいますか。

 例えば開高健さんや日野啓三さんは戦場ルポを書く一方で純文学も書きましたが、裏の取れない事実は一旦身体に取り込んで小説化するのも一つの伝え方だと教えられた。しかも私に時代小説を書けと勧めてくれた寺田博さん始め、よほどいいものを書かないと納得してくれない昔ながらの編集者が、あの世にもこの世にも大勢いらっしゃるので(笑い)丹念に書きました」

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン