国際情報

ベトナムでの米朝会談は再び「政治ショー」に終わる理由

習近平氏のコントロール下にある金正恩(Avalon/時事通信フォト)

 2018年6月に開かれた初の米朝首脳会談から8か月が経過したが、米朝間の最大の懸案事項である「非核化」は一向に進んでいない。果たして2月27、28日にベトナムの首都・ハノイで開催される2度目の首脳会談で何らかの進展はあるのか、それとも今回も“空手形”に終わるのか──。朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。

 * * *
 トランプ米大統領は金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談にこだわっているが、北朝鮮の非核化を進めるためには、まず中国と協議を行わなければならない。中国は北朝鮮の事実上の「宗主国」であり、中国の習近平国家主席が金正恩氏をコントロールしていると考えられるからだ。

◆中国の後ろ盾

 歴史を振り返ると、北朝鮮と中国の関係は常に友好的といえるものではなかったが、少なくとも現在の中国は、政治的にも経済的にも北朝鮮の後ろ盾となっている。中国にとって北朝鮮は中国軍と米軍が直接対峙することを避けるための「緩衝国」となっているからだ。

 北朝鮮は強力な経済制裁を受けているにもかかわらず、メディアに公開された平壌の街や人々の様子を見る限りでは、経済が上向いているように見える。これは、経済制裁にもかかわらず、中国との貿易が行われているだけでなく経済支援を受けているためだろう。

 米国は偵察衛星の画像から、中朝国境の橋を物資を積んだトラックが往来していることを把握していてもおかしくはないのだが、中国を非難しない。また、米国は北朝鮮船と外国船による瀬取りを把握していても、監視を行うだけで阻止することはしない。

 中国は、中朝国境と北朝鮮の周辺海域を封鎖できるだけの軍事力を保持している。つまり、中国が米国と共同歩調をとって経済制裁を行えば、北朝鮮はたちまちのうちに干上がるのだが、そうした動きもない。

◆「成果」を焦るトランプ米大統領

 安倍首相からノーベル平和賞の推薦を受けたことを公表するほど「困窮」しているトランプ大統領は、今回、2度目の米朝首脳会談で何らかの成果をあげなければならない。

 2度目の米朝首脳会談が1度目と同様に、非核化に向けて何の進展もなかったとしても、トランプ大統領が自画自賛できる程度の成果があればいいわけだが、本当に何の進展もなかった場合は、議会ではトランプ大統領の外交能力について疑問が提起されるだろうし、ノーベル平和賞が授与される可能性も当然ゼロとなる。

 北朝鮮としては、経済制裁の部分的な緩和などの何らかの実利を得るために表面的には譲歩するだろう。しかし、最近の米中関係の悪化ぶりを考慮すると、習近平氏の意を受けた金正恩氏が米国に譲歩する可能性は低い。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト