◆TBSが豊富なオリジナル映像を保持しているワケ

『歌のゴールデンヒット』のテレビ欄に書かれていた〈▽今夜しか見られない超貴重映像を大放出!〉という謳い文句に偽りはなかった。なぜ、TBSはこれほどオリジナル映像を保持しているのか。

 振り返れば、歌番組の大きなブームはTBSから始まっていた。1959年12月27日、第1回の『日本レコード大賞』の受賞発表が行なわれる。TBS(当時のKRT)は3日後の30日、録画で午後3時5分から35分間放送。1969年には大晦日のゴールデン帯で生中継し、高視聴率を獲得した。すると、翌年にTBS以外のテレビ・ラジオ民放8局が『日本歌謡大賞』を立ち上げる。1970年代中盤には各局に音楽祭が乱立し、“賞レースブーム”が巻き起こった。

 1978年1月、TBSは4つの基準を元に独自のランキングを作成して10位から週間順位を発表していく『ザ・ベストテン』を開始。当初は10%台後半だった視聴率は、10月以降25%を下回ることなく、翌1979年には30%台を連発する。これを見た他局もランキング番組を続々と作った。

 1980年代後半から音楽祭の視聴率が低下していき、1990年代前半には各局が撤退していく。『日本歌謡大賞』も1993年限りで終了した。その中で、TBSは『日本レコード大賞』を継続。『ザ・ベストテン』は1989年9月限りで幕を閉じたが、1992年10月から土曜20時台で『COUNT DOWN100』という新たなランキング番組を始め、1993年4月からは土曜深夜帯で『COUNT DOWN TV』に衣替えし、現在も放送中だ。

 TBSは先駆者として放送音楽界を牽引し、試行錯誤しながらも継続してきた。そのため、『歌のゴールデンヒット』ではどの年代でも高い確率でオリジナル映像を放送できた。

 現在、TBSにはゴールデン帯のレギュラー歌番組がない。他局を見ても、特番の歌番組では数字を獲れても、毎週の放送となると現状は厳しい。そんな時代だからこそ、先駆者のTBSが新たな歌番組に挑戦してほしいとも感じた。

※参考文献:『TBS50年史』

●文/岡野誠:ライター・芸能研究家・データ分析家。研究分野は田原俊彦、松木安太郎、生島ヒロシ、プロ野球選手名鑑など。一時、『笑点』における“三遊亭好楽ドヤ顔研究”を試みるも挫折。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)は、『ザ・ベストテン』の本邦初公開と思われる年別ランクイン数の順位、田原俊彦の出演シーンを詳細に振り返るなどの巻末付録も充実している。

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン