それにしてもこの「在日認定」、なんとかならないのだろうか。何か犯罪者が登場した場合、ネット掲示板の書き込みやSNSには「実名はよ」などと書かれる。つまり、在日が日本人のような通名を使っていると勝手に判断し、こうした卑劣なことを犯すものは在日に決まっていると考えるのだ。「日本人なら悪いことをしないはず」という妙な安心感があるのだろう。
福島氏も土井氏もネトウヨの間では「反日議員」「売国奴」認定をされており、その流れに乗るかのように著名な評論家までデマを書いてしまった。経験も名誉も社会的地位もある人でも同様のことをしてしまう状況にあるのだ。
これから懸念されるのが、「高齢ネトウヨ」の増加だ。今年1月、大分県の66歳の男が在日の中学生に対し、「おまエラ不逞朝鮮人」「チョーセン・ヒトモドキ」などとブログに書き、侮辱罪で科料9000円の略式命令を受けた。ここで登場する「おまエラ」の「エラ」は、韓国人の顔はエラが張っているという決めつけから来る差別用語で、嫌韓系の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のスレッドではよく登場する言葉だ。
長年勤め上げた会社を定年退職し、さて、ブログでも始めるかな、とネットにアクセスをすると、在日や韓国を罵倒する意見がネットには多数書き込まれているのを目にする。ここで「おまエラ」などの言葉を覚えたり、「レイプは韓国の国技」などの言説を信じ込む。韓国の政治家や反日活動家に関するニュースを見て義憤に駆られ、いつしか高齢ネトウヨになってしまう。晩節を汚すのはおやめなさい、と忠告申し上げよう。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2019年3月8日号