「小学生ぐらいの子供2人が昼間なのに遊んでいると、私が勤めていた児相に通報がありました。保護すると、学校に行かせておらず、住民票もありませんでした。親はわずかばかりの蓄えとパートで暮らしていました。もし通報がなければ、ずっと“消えた子供”のままだったかもしれません。
乳幼児の子供を置き去りにした母親もいました。偶然、泣き声を聞いた近隣住民の通報で保護できました。小さくて名前もわからない。健康状態確認のため病院で受診させたら、病院のスタッフが子供の顔を覚えていたので名前は判明しましたが、住民票はありませんでした」(萬屋さん)
各地を転々として、窃盗を繰り返す夫婦を逮捕し、“ねぐら”のホテルを捜索すると、所在不明児が見つかったというケースもあったという。
最も多いのが、経済力の乏しい若い女性が女手ひとつで子供を育てるため、手っ取り早く風俗関連で働く場合だ。働く環境は劣悪で、保育園にも預けられない。安いアパートや寮を転々とし、住民票から離れてしまう。そうした格差の下で、子供が所在不明児になるケースが目立つ。
「ネグレクトで保護すると、所在不明児だったというケースはいくらでもあると思います。ただし、そうした子供を追跡して救うのは難しいです。転々としている先で、異変に気づいた人が通報しない限り、永久に誰にも気づかれず、ひっそりと命を落とすかもしれません」(萬屋さん)
今回の調査は、厚労省が2014年から始めた「所在不明児童の調査」の一環でもある。第1回調査(2014年5月1日)では「2908人」だったため、いくら調査しても、一向に改善していないことがわかる。
もっと深刻なのは、『誰も知らない』の4人きょうだいのように、出生届もなく、そもそも住民票もない子供たちだ。そうした子供は所在不明児でもなく、今回の調査からも完全に抜け落ちている。
「住民票は半年~数年間、その自治体に居住実態がなければ抹消されます。つまり、住民票をもとにした今回のような調査では、そうしたハイリスクな家庭の子供は調査対象外です。今回判明した2936人は、氷山の一角と言えるのです」(石川さん)
SOSのサインを出す“消えた子供”は、あなたのすぐ近くにいるかもしれない。
※女性セブン2019年3月21日号