芸能

田中みな実 女優初挑戦の『絶対正義』で魅せたポテンシャル

山口紗弥加がモンスター主婦を怪演(番組公式HPより)

 深夜枠のドラマは題材においてもキャスティングにおいても「実験」ができる故に、思わぬ発見に遭遇することが少なくない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 今期ドラマのナンバーワンに推したいスリリングさ。何の変哲もない日常の中に潜む、底知れない闇を見せられてしまうのが『絶対正義』(フジテレビ系土曜日23時40分)です 。主人公・高規範子(山口紗弥加)の口ぐせは「私何か間違ったことしている?」。

 その姿は真っ白いスカートに真っ白のジャケット。オカッパ髪に見開いた目、ロボットのような口調、ちょこちょこと小刻みな歩調。存在がどことなく不気味。いや、それより何より「正しいこと=いいこと」という、範子の中の鉄壁常識がヤバイ。そして「家族」という括りへの盲信も。

 範子は間違いや法を犯すものを許さない“絶対正義”主義者。「私たち、家族だよね」と確認し合った女子校時代の親友4人を破滅へと追い込んでいく。「正しいから」「家族だから」「あなたの味方だから」という理由を楯にして、人の行動を束縛し制止していくモンスター。

 そう、「家政婦のミタ」の鉄面皮にも通じる直進型人間の恐ろしさと奇妙さ、そこから滲み出てくる滑稽さ。範子役の山口紗弥加さんの徹底した演技に目を奪われてしまいます。

 範子のキャラクターは異色で、シニカルなパロディにも見えてくる。あまりリアルに演じてしまったら深刻すぎてしまうから、意図的に演出し戯画化しているのかもしれません。

 そんな「破壊的トリックスター」に成り切っている山口さん。セリフ回しだけでなく全身全霊を使って演じているこのドラマ、山口さんの役者としての殻をもう一枚破り、次へとつながるステップとなることは間違いなさそう。

 いや、山口さんに限りません。役者たちの頑張りぶりも見所です。

「初めて女優に挑戦」という元TBSアナウンサーの田中みな実さんは、「初」というわりに演技が自然でびっくり。役どころは「妻子ある男性と不倫中の女優・石森麗香」。実にさらりと石森麗香に成りキャラを体現しています。

 たしかに田中さんのアナウンサー時代を思い返すと、「ぶりっ子」キャラを開花させ「みな実はみんなのみなみだよ」と決めセリフまで作り思い切り楽しませてくれました。どう振る舞えばより面白いか、より周囲のリアクションが大きくなるか、観察しつつぶりっ子演技の研究をしていたとしか思えない。

 つまり、アナウンサーの頃から田中さんは「演技力」を磨いていたのでは。この調子なら、今後も女優として走っていけそう。そう、知らぬ間に「みんなのみな実」は「女優のみな実」になっていました。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン