一方、桜井ユキさんが演じる今村和樹はフリーのノンフィクションライターという設定です。サバサバとした語り口、他人の意見に左右されない頑固さ、ベストセラーを出そうという野心など、こちらも役どころをよく押さえています。役者の持ち味と配役とがピタリと決まっています。
片瀬那奈さんが演じる理穂・ウィリアムズは、インターナショナル・スクールを経営する裕福な夫人。しかし外国人の夫との間で不妊治療をめぐって問題を抱え苦しんでいます。厚切りジェイソンとの夫婦ぶりもいかにも板についていて、いい。
さらに、美村里江さん演じる西山由美子もリアルです。夫の借金で苦しい暮らしを強いられている、どこにでもいそうな平凡な主婦。髪型から衣服まで、庶民の匂いを漂わせている由美子は子どもへの虐待の疑いをかけられ窮地に陥って……。
人格、気質、生活背景、ファッション、話し方、歩き方……一人ひとりが粒立ちを見せている。見事なバリエーションとなっている。
誰か一人が突出しているというよりも、このドラマの最大の面白味は「5人の女性のバリエーション」「個性の違う人物の陳列」の面白さにあると言ってもいいでしょう。
まるでショーケースにずらりとディスプレイされた女たち。各人一筋縄ではいかない問題に悩んでいる。多種多様なだけに、視聴者はそのいずれかに自分を重ねてドラマを楽しむ、という仕掛けでしょう。
そして何よりもこのドラマが怖い点は、見ている視聴者一人ひとりの中に「プチ範子」がいる、ということに気付かされてしまうこと。
誰でも一度は「正しい」を楯に他人をとがめたり責めたりしたことがあるはずです。「家族」「約束」にこだわって、自分の中の正義をふりかざし、それが残酷さと結びついていく瞬間……。ああ、あったなと思い出しつい人生について考えてさせられてしまう。それもまた秀逸なこのドラマの力ゆえでしょう。