コパノキッキングを労う藤田菜七子騎手(時事通信フォト)

──女性だから乗せてあげたという部分は?

コパ「いや、それはない。下手だったら乗せないし(笑)。第一、そんなことしたら厩舎にも迷惑ですし、レベル以下の騎手ならファンに対しても失礼でしょう。実際、菜七子はうまくなりましたよ。確かに、もともと育ててあげようという気持ちを持ってたこともあるけど、それは個人馬主にしか出来ないことだから。まあ、オーナーも調教師も一流ではないから(笑)、思い切ってできるんだよ」

 謙遜するコパ氏だが、過去にはコパノリチャードで高松宮記念(2014年)を制覇、コパノリッキーでフェブラリーステークスを連覇(2014年、2015年)するなど、数多くの重賞勝ちを誇る大馬主である。自ら開運につながる風水を実践してきた立場も交えて、コパノキッキング購入のいきさつを明かしてくれた。

コパ「キッキングが2歳の時に3月のフロリダのセリに出たんです。明くんが(村山明調教師)そのセリに行くと聞いて調べたら、風水的にフロリダがすごくいい方向だったんですね。

 それで、初めから予算は10万ドル(約1100万円)までね、と伝えてたんだけど、当初明くんは『買えませんよ、そんな値段じゃ』とか言っていました。だいたい40万ドル(約4400万円)とか60万ドル(約6600万円)とかまでいくようなセリだったらしいんでね。しかも、『一番時計のを10万ドル』なんて言っていたから、ますます無理だろう、と(笑)。ところが、それが10万ドルで落ちちゃったんだよね」

──何か理由があったんですか。

コパ「足が曲がってた(笑)。内向(ないこう)していたんです」

──気にならなかったんですか。

コパ「いやあ、その辺が僕と村山明は能天気なんで(笑)。生まれつきなんだから足が曲がっているのも本人は分かっているだろうから大丈夫だろ、というね。ハッハッハ(笑)。ただ、条件はよくないぶん、馬体重があまり増えないようにしようという話はしました。500キロもあると負担も大きいから、いまは480キロくらいに調整して走らせています」

──騸馬にされましたね。

コパ「これね、とにかくオツムがどうしようもないんですよ(笑)。まあ、そのおバカなんですよ(笑)。日本に持ってきて、検疫終わって育成牧場に入った時に連絡したんです。で、気になっていたから『足はどう?』って聞いたら、『いや、足よりもってひどいところがあるって』言われて。『なに?』って聞き返したら、『バカです』って(笑)」

──気性難というやつですか。

コパ「みたいです。僕が見に行くって言ったら『気を付けて来てください』って言われるくらい(笑)。まあ、環境に慣れてきたら少しおとなしくなっていましたけど、周りにケガさせてもいけないしね。日本来て2、3か月して、7月くらいには去勢させました。

 だから、いま走っているのは去勢のおかげですよね。キッキングが走るようになってから、(騸馬に)してなきゃよかったのに、とかずいぶん言われますけど、あのままでしたら、たぶん難しかったと思いますよ。いまでも馬場に入った時には飛んだり跳ねたりで、騎乗者落としたり激突したりしているみたいですし」

──レースではそう見えないですよね。掛かったりもしないし。

コパ「ああ、そういうところは大丈夫みたい。とにかくゲートに入るまでが大変みたい(笑)」

 そんなキッキングと菜七子のコンビは、今年いっぱいは既定路線だという。結果を見ながら、と慎重ながらも、夢はアメリカ・ブリーダーズカップ(11月サンタアニタパーク)まで広がっているようだ。

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