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【著者に訊け】島崎今日子氏 『森瑤子の帽子』

 その山田氏が〈ゴージャスであることに勤勉〉とも評する森瑤子、本名・伊藤雅代は1940年11月、母・喜美枝の川奈の実家で生まれ、翌春、父・三男に呼び寄せられる形で中国・張家口へ。1945年3月、母や弟と帰国し、父が復員したのは翌年6月だった。その間、美しく気丈な母は友人と託児所を始め、弟や妹と比べて厳しく育てられた長女は、〈母の愛情に飢えていた自分〉を何度も作品に書いている。

 一方、小説家志望だった父は生涯に12回もの転職を繰り返し、下北沢に瀟洒な洋館を買い、子供にはバイオリンやピアノを習わせた。後に母は美容院を開業し、留学生や下宿人が同居する中で育った森は、1959年春、東京藝大器楽科に入学する。

「サルトルとボーヴォワールの関係やサガンに誰もが憧れた時代に、まだ恋にも流行にも疎かった森さんは、油画科の友人たちとの交流を通じて感性を磨いていく。彼女が片思いした自称詩人の通称〈ムッシュウ〉と〈ガコ〉の関係なんてまさにサルトルとボーヴォワール的です。また婚約パーティまで開きながら結婚を反対された故・亀海昌次さんとの友情は、人気作家とその装丁を手がけるデザイナーとして生涯続きます。

 この刺激的な青春時代が彼女の華やかな交友関係の根底にはあったと思うし、筆名に繋がる女性とも器楽科で出会うんです」

 後に日本初の女性コンサートマスターとなる同級生、旧姓・林瑤子氏だ。美しく才能ある林氏に森は憧れ、〈私は彼女の名をほとんどそのまま、ペンネームにしている〉と本人も書く。むろん勝手に名前を使われた側は複雑だろうが、林氏の証言は森の主婦時代の屈託をよく伝え、妻、母、作家と、人生の場面ごとに異なる顔を見せる森瑤子という迷宮に、読む者もまた引き込まれてゆくのである。

◆自ら安定を壊しつつ突っ走った

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