「そうは思わんよ。ここ3年、明徳から3人(2016年古賀優大・ヤクルト、2017年西浦颯大・オリックス、2018年市川悠太・ヤクルト)がプロに入っているし、甲子園でも成績を残しているんやから」
明徳離れの背景には、同じ県内のもうひとりのスーパー中学生の存在があったかもしれない。高知中学3年生だった昨年度、一般的に硬式球よりも球速がでにくい軟式球で、150kmを記録した豪腕・森木大智。今春、彼は全国の強豪校からの誘いを断り、そのままエスカレーター式に高知高校に進学することを決めた。
2010年から春夏どちらかの甲子園に必ず出場してきた明徳義塾も、今後は高知で苦戦を強いられるのではないか――そういう判断が、明徳を離れた球児たちにあったのかもしれない。
「うん、そうやね。強力なライバルがいるからこそ、明徳で勝負したいと考える親子もいれば、よそへ行った方が甲子園に出やすいと考える親子もいる。やっぱり、明徳を選んで入って来てくれた選手を鍛えて強くするのが明徳の野球や。2人のことは残念やけど、今度、入学してきた選手もええのがおる。まあ、楽しみにしとってや」
去る者は追わず、来る者は拒まず。高知の高校野球は群雄割拠の時代を迎えた。
●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)