日産ブランドは復活できるか(AFP=時事)

 現場にも熱心に足を運び、若手にも人気があった。若手から意見を吸い上げて改革プランを立案し、実行した。「パワー・カムズ・フロム・インサイド(力の源泉は社内にある)」というキャッチフレーズを掲げ、自ら実践していました。人の話に耳を傾ける努力をし、最後は自分の思う方向に持っていく。その経営手腕から学ぶことは多かった。

〈ゴーン改革により、2兆円超の有利子負債は4年で完済。小枝氏は「瀕死の日産を救った多大な功績があったのは事実」と語る。一方で、「就任当初から、気になるところはあった」と続けた〉

 最初から彼は「報酬」にはこだわっていました。共同会長だった私が年10億円を超えるべきではないと制すると、ソニーのハワード・ストリンガー(元会長兼社長兼CEO)の名前を挙げ、「彼は10億円以上もらって赤字を垂れ流すだけだが、私は仕事をしている」と反論するのです。私も譲りませんでしたが、その後も毎年数百万円単位まで細かく増額に執着していました。

「報酬額こそが評価」というのが彼の哲学なのです。

〈小枝氏は、一時期までゴーン氏へのブレーキは機能していたと見ている。たとえば2003年に共同会長に就いた小枝氏は「月に1度はマンツーマンの定例ミーティングを欠かさず、最低1時間は話し合った」という。プロパー出身トップと向き合う時間が、牽制になっていたともいえる。だがやがて、綻びが見え始める〉

 2005年4月、ゴーンはルノーCEOも兼ねることになりました。日本に滞在するのは月に1週間程度になり、会議の出席も減る。人の話に耳を傾ける余裕は失われていったのだと思います。

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