芸能

『東京独身男子』の「スベってる感」はどこからくるのか

高橋一生はメガバンクに勤めるエリートを演じる

 キャストが揃えばドラマは面白いか、と言われれば必ずしもそうとは限らないのが難しいところだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 春ドラマが続々とスタートしています。今夜第2話を迎えるのが『東京独身男子』(テレビ朝日系土曜午後11:15)。高橋一生、斎藤工、滝藤賢一と人気俳優が揃い踏み。テーマもあわせて注目のドラマですが……この「ものすごくスベってる」感、いったいどこからくるのでしょうか?

 物語の中心は3人の「ハイスペック」独身男子。何かといえばつるんでおしゃべりに興じ、恋愛市場話に花を咲かせている。その3人の人物像は?

メガバンク勤務の石橋太郎(高橋一生)=分析志向でアジェンダ(行動計画)好き。
審美歯科医の三好玲也(斎藤工)=バツイチ、チャラくてすぐナンパ。
弁護士の岩倉和彦(滝藤賢一)=エリート的上から目線で、結婚を家政婦調達手段と勘違い。

 冒頭から3人を「A+」「AA」「AAA」と格付けし自らハイスペックとか位置づける発想そのものが、古色蒼然。肩書きという記号で人の価値を単純に決めてしまう発想は、バブル時代あたりの匂いをプンプン放っています。

 舞台は高級マンション、BGMもゴージャス感満載で、「アッパークラス」を演出したつもりでしょう。でも、どこか掛け違っている感が否めない。

 職業設定もそう。太郎はメガバンカーという設定です。でも今や大手銀行は不人気職業の筆頭株。就活生による「最も敬遠したい業界」ランキングでは「メガバンク・信託銀行」が1位、という不名誉ぶり(日本経済新聞2019/2/20)。現実に、メガバンクは大規模な人員削減計画を発表、フィンテックは浸透しAIに仕事をとられそうな気配。無駄金を使えるのんきなハイスペック銀行マンって、なかなか想像しにくいのです。

 歯科医もそうでしょう。過当競争に突入している歯科医院、今や「コンビニの数より多い」といわれ、チャラくて脳天気な職業とはとても思えない。

 そして弁護士。エリート職業の象徴とはいえ、国策でその数は増え、しかし犯罪や訴訟が増えるわけでもなく。とうとう年収2~300万円程度の貧乏弁護士も誕生しつつある昨今。まあ、滝藤さんが演じる「ボス弁」は一握りの幸運な成功者かもしれないけれど。

 セリフもどうか。「女はその本質をSNSのアイコンに隠している」「結婚とは女に幸せを与え、男から自由を奪う」などと、「名セリフ」を気取りたい気持ちは伝わってきますが、「女は…」あたりでもう雑さを感じてしまいます。

「AK(あえて結婚しない)男子」というワードを流行らせたい願望もミエミエで、一昔前の広告代理店臭が漂っていそう。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン