それに対して、昨今話題となったドラマを見回してみると……例えば前クールに注目された『3年A組-今日からみなさんは、人質です-』や『トクサツガガガ』は、設定こそかなり風変わりでした。高校生が教師に人質にされたり、主人公が特撮オタク女子だったり。
しかし、中身はしごく真面目に現代人の生きづらさに向き合い、社会が押しつけてくる決めつけに抗い、友達間の信頼と裏切り、親子間の葛藤などの矛盾に真摯に迫ろうとしていた。人物の描写は細やかで、心の揺れや感情の幅といった内面を丁寧に表現していました。その上での尖った設定だったからこそ、多くの視聴者の心をつかんだのでしょう。
そう、今はまず「人間が丁寧に、細やかに描き出されているドラマ」でないと高評価は得られない時代。
さて『東京独身男子』は? 少なくとも第1話を見る限り、単純化しすぎでは。ドラマ制作側が「記号の世界の住人」のままなのか? バブルの頃ならいざ知らず、もはや世の中は複雑化し情報は錯綜し、単純な記号世界には戻れない。視聴者もナイーブな視線でドラマを見つめている時代です。
とはいえ、ドラマはまだ始まったばかり。第2話以降、このまま単純化路線を突っ走るのか、それとも別の方向へぐいぐい曲がっていって視聴者を引っ張ってくれるのか。興味津々、追いかけてみたいと思います。