提言の存在を知っていた施設は約8割だが、実際に内容を読んだ施設は約6割。そのなかで、腎臓病患者の透析を中止したり、導入を見送ったりしたことがある施設は47.1%を占めた。それらの患者の89.7%は高齢者で、46.1%が認知症だったという。

 学会は、意思決定プロセスに関する新しいガイドラインを今年中にも作成したいとしている。本人の意思決定とともに、本人と家族と医療チームの三者が繰り返し検討しながら決めていく協働意思決定を盛り込んだ、日本らしい意思決定プロセスが組み込まれるのではないかと予想される。

 いいガイドラインができることを期待しているが、それですべてが解決するというわけではない。ガイドラインを出発点として、ぼくたち一人ひとりが、自分の死をどのように考え、どんな意思決定するのか、より明確にしておかなければならない。

 福生病院の透析中止をめぐる問題では、死亡した44歳の女性に対して、透析中止の選択肢を示すならば、どう生きるかという選択肢も示してほしかった、とぼくは思う。

 透析はつらい。でも、そのつらさに耐えてでも、「生きたい」という思いを引っ張り出すのも医療の役割ではないだろうか。それには主治医だけではなく、精神科医や心理療法士らとチームを組んで当たる必要がある。

 また、家族と相談し、患者が自分の生きがいを見つけられるように、サポート体制をつくることも大切だ。簡単な仕事ではないが、せめて、そうする努力はしてもよかったのではないかと思う。

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