溝口:プロ野球選手とヤクザの一番の接点は、むしろ野球賭博よりも覚せい剤ですね。清原和博にしても、同じ元巨人の投手だった野村貴仁にしても。彼らが直接関係なくても、覚せい剤はヤクザの資金源だから。
鈴木:あとは球団の私設応援団に暴力団が噛んでて、外野席とかの利権を持って、売買をしていました。2008年には暴力団を排除できなかったからという理由で、中日の私設応援団が活動自粛したこともあった。
プロ野球選手にとってヤクザとの交際はメリットがないんだけど、彼らは有名になると六本木とかに飲みに行くようになる。そうした盛り場のトップはやっぱり暴力団だったりするんですよね。だから、暴力団との交際というのは、彼らにとってもステータスなんだと思う。
溝口:力一本で勝負してダメになったら終わりという、一寸先は闇の世界観を、アスリートとヤクザは共有しているのかもしれない。
鈴木:プロ野球からヤクザになった選手も結構いますね。そういえば以前、元巨人の捕手に、大阪にある酒梅組の事務所で会いました。
溝口:もう一つ、今はプロとアマのスポーツの境目が曖昧になっているでしょう。だから、本来なら興行にまつわるものしか関係のなかったヤクザとの付き合いにも、アマチュアが迂闊に手を出して問題になるケースはあると思う。
鈴木:アスリートのなかには、スポーツだけができて人間的に成熟していない選手も多い。女やカネで騙されて、そこに暴力団が入り込んでくる。ウブだからヤクザがつけ込みやすいんですよ。東京五輪の選手たちには、くれぐれも気をつけてほしいですね。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』、『山口組三国志 織田絆誠という男』など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号