ライフ

興福寺貫首が無人島へ持って行く一冊は中国古典『菜根譚』


興福寺の貫首・多川俊映師

 今年創建1300年を迎える興福寺は、五重塔や阿修羅像など、数多くの国宝を擁することでも知られる。その貫首(最高位の僧)・多川俊映師(72)は重要文化財の修復や中金堂の再建などに力を尽くし、「奈良に天平をよみがえらせた高僧」とも呼ばれる。モノや時間にとらわれすぎで、即物的になりすぎている世の中だが、多川師は心を鍛えるために「古典を読む」ことを提案する。

 * * *
 私は僧侶として、数多くの人々から人生の悩み相談などを受けてきました。そのなかで感じたことがあります。

 重病を患っている人は、意外にも冷静に自分の生を見つめ直して、落ち着いた人生を送っている人が少なくないのです。

 9年前に亡くなられた、東京大学名誉教授で免疫学者の多田富雄先生がそうでした。

 晩年、脳梗塞の後遺症で右半身不随となり、食パン1枚食べるにも1時間かかるような生活を送っておられた。しかし、死がすぐそばにあるような毎日の生活のなかに、焦りや戸惑いのようなものはありませんでした。

「今は死を思わない生が横行している」とおっしゃり、「静かな諦めもひとつの選択」「延命技術が人間を幸福にするのか」と話されていた。極めて落ち着いた精神状態でご自身の生と死に向き合っておられました。

 私は多田先生と交流させていただくなかで、「死を忘れた生は傲慢だ」と感じたのです。

「いつ死ぬか分からない」と思いながら暮らしている人の10年と、「自分は元気で、死ぬなんてあり得ない」と思っている人の10年では、命と向き合う時間の重みが違ってくるわけです。

 結果として、心の鍛え方の度合いも変わってくる。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン