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韓国の「反日」感情の意外な正体

 朝鮮戦争以降にも、北朝鮮は1983年に東南アジア歴訪中の韓国大統領の暗殺を企てて起こしたビルマのラングーン(現ミャンマーのヤンゴン)爆破テロ事件(死者21人)、1987年に日本人に偽装した工作員が韓国の民間航空機KALを爆破した大韓航空機爆破事件(同115人)、2010年に予告もなしに韓国側の民間人居住地域を砲撃して軍人2人、民間人2人が死亡した延坪島砲撃事件など、最近まで韓国にテロや軍事攻撃などを仕掛け続けている。

 しかし、このような事件を起こした北朝鮮に対し、怒っている韓国人は一部に過ぎない。ほとんどのメディア、あるいは教育現場では、1945年以前の日本の植民地統治政策に対する批判、非難を続けているのに対し、1945年以降、最近まで続いていた北朝鮮のテロや戦争犯罪については言及を避けているからである。少なくとも人命被害の面から見れば、北朝鮮による被害が「最近」発生し、その被害も「より大きなもの」だ。

 これは、1990年代以降の傾向である。1990年代以前にも日本統治時代への批判的な教育と報道はなされていた。しかし、1987年の民主化まで、軍人出身の大統領の独裁的統治下では、反日教育よりは反共教育が徹底されていた。

 当時の韓国で行われた反北朝鮮政策は、現在の北朝鮮による反米、反日政策に負けないくらい強烈な敵意を持ってなされていた。学校では毎年「反共」をテーマにした作文大会、弁論大会などが開かれ、道徳や社会科で語られる北朝鮮人民はいつも空腹で、貧しく、朝鮮労働党独裁下で奴隷のような生活をしていた。北朝鮮社会は地獄そのものだった。

 しかし、民主化以後「同じ民族」を強調する民族主義的な雰囲気が高まり、同じ民族である北朝鮮への敵意は徐々に薄れていく。スポーツ分野では合同チームを組んで国際大会に参加したり、南北が力を合わせて日本に対抗するといった漫画が流行したりした。しかし、ここには1つの副作用があった。「同じ民族」に向かっていた「敵意」は消えたのでなく、「他の民族」へとスライドしたのだ。つまり、米国や日本に対しての「敵意」へと変わった。特に日本への敵意は、以前よりも増強され、具体化された。韓国は「民主化」という雰囲気に煽り立てられ、反日感情を悪化させたのである。

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