仕事場では多少の融通を利かせる人が大半とはいえ、労働契約に違反した指示や働かせ方を恒常化させていると、ストライキや訴訟に発展する可能性がある。そういった状況を許した上司もまた、相応の処分を受ける(場合によって個人的に罰金を払わなくてはいけない)。

 わたしの元バイト先のカフェの店長は、実際に解雇されている。性差別や人種差別発言をする同僚について数人で相談しても対処せず、シフト組みが非効率的で残業の強要が多かったうえ、有給休暇日数の管理がずさんで人手不足になるなど、 多くの問題が重なったためだ。

 また、同一労働同一賃金、求人は仕事内容を明確にした欠員補充が前提なので、「どの企業で働くか」よりも「どんな仕事をするか」が重視される。企業イメージが悪くなれば優秀な働き手がいなくなってしまうから、企業も労働者の権利侵害には敏感だ。

「利益を上げる」といった話の前に、「労働法を守らないことはハイリスクローリターン」。まぁ、それでも100%守られているわけではないけれど。

“さまざまな働き方”を描き話題に(ドラマ『わたし、定時で帰ります。』公式HPより)

◆法律重視のドイツ、空気や慣例優先の日本

 一方日本では、「法律よりもその場の空気や慣例を優先」はめずらしくない。

 中日新聞ウェブ版は5月13日、『昼休み返上、増加中 働き方改革しわ寄せか』という記事を公開した。残業を減らすため、本来休むべき休憩時間に労働している人の増加を報じている。休憩時間なしに働かせるのは違法。それでも、それがまかり通っている。

 こういう話は、どこにでもある。友人から「退職届を受理してもらえない」「有給休暇取得を却下された」「労災が認められない」なんて話をなんども聞き、そのたびに「違法じゃないの? 抗議すればいけるよ」と言うのだが、「絶対おかしいよね〜」「でも今抜けるとまわりが困るし……」「一応言ってはみたんだけど意味なくて」という反応で終わることは少なくない。

 もちろんそこには、それなりに理由があるだろう。人間関係のしがらみだとか、定時帰宅しづらい雰囲気だとか、そもそも上司が法律を守る気がないとか。

 ドイツはなにかにつけ「契約書」や「法律」を引き合いに出す国だから、「契約書にこう書いてある」「法律でこう決まっている」と言いやすいし、それが強い説得力をもつ。ドイツのような契約社会と日本の人情社会では、そもそも価値観がちがう。

 とはいえ、そういうのをひっくるめて、それでも日本は法治国家。法律は守るべきだし、守らない相手には抗議する。それが本来のありかただと思う。

◆本気で労働環境を変えたいなら声を上げよ

 よく「ドイツにはこんな決まりがあって、労働者の権利が守られている。だからこんなにもホワイトなんだ」という主張を耳にするが、じゃあ同じルールを日本に取り入れたら、日本もドイツと同じような労働環境になるのだろうか。

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